梳手すきて)” の例文
瑠璃子はもと洋髪屋の梳手すきてをしている時分から方々の待合へも出入をしていたので、こういう事には抜目のあろうはずがない。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
中は女やもめの住みそうな、磨き抜かれた調度、二三人の若い梳手すきてが、男の客を物珍しそうに、奥の方から娘らしい視線を送っている様子です。
髪結いのおかみさんは梳手すきてに云いつけて、私の指に繃帯ほうたいを巻いてくれた。私は恐縮してひたすら陳謝したが、先輩は
安い頭 (新字新仮名) / 小山清(著)
梳手すきてが来ないので、髪をうのにだいぶひまが取れた。旦那は湯にって、ひげって、やがて帰って来た。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
慰みに、おしゃくさんの桃割ももわれなんか、お世辞にもめられました。めの字のかみさんが幸い髪結かみゆいをしていますから、八丁堀へ世話になって、梳手すきてに使ってもらいますわ。
湯島の境内 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
年は取っても腕は狂わず、五人の梳手すきてを使って、立ち詰めにまげの根締めに働いていた。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
あぶく銭を取ったって、人眼につき易い大場所の遊びはしめえと、そこを踏んで此里ここへ出張ったのが俺の白眼にらみよ。それが外れりゃあ、こちとら明日から十手を返上して海老床へ梳手すきてに弟子入りだ。
中は女やもめの住みそうな、磨き抜かれた調度、二三人の若い梳手すきてが、男の客を物珍しそうに、奥の方から娘らしい視線を送っている様子です。
「君江さんは全く徹底しているわ。」とダンス場から転じてカッフェーに来た百合子ゆりこというのが相槌あいづちを打つと、もとは洋髪屋ようはつや梳手すきてであった瑠璃子るりこというのが
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「そら梳手すきて御勢おせいですよ。昔し健ちゃんのあすびに来る時分、よくいたじゃありませんか、宅に」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
出来ないことはありますまい、親もなし、兄弟もなし、行く処と云えば元の柳橋の主人の内、それよりは肴屋さかなやへ内弟子に入って当分梳手すきてを手伝いましょう。……何も心まかせ、とそれにまった。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その日には、先に梳手すきてが二人ばかり来て、後からいい時分にお師匠さんが廻って来た。私は母が髪を結うとき、家に居合わせば、いつもそばにいて見た。梳手の一人は私の学校友達の姉さんであった。
生い立ちの記 (新字新仮名) / 小山清(著)