枯尾花かれおばな)” の例文
その危険が現前すると共に、人々はその危険に対して必要以上に神経過敏になり、その恐怖心を枯尾花かれおばなに投射してそこに幽霊を見た例も少なくなかった。
地異印象記 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
それから十日ばかりは、何のお話もなく過ぎ去ったが、その間とても、噂は噂を生み、おびえきった人々は、枯尾花かれおばなを妖怪と見誤ったことも度々であった。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
廿六日 ちぎれ雲、枯尾花かれおばなの下にあり。鴨、椽側の日向ひなたにあり。俳句新派の傾向を草す。夜を徹す。
雲の日記 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
枯尾花かれおばなを幽霊と見ておそれるような結果になってしまうのである、それを検討することに於て
余は大衆作家にあらず (新字新仮名) / 中里介山(著)
夕日の残る枯尾花かれおばな何処どこやらに鳴く夕鴉ゆうがらすの声も、いとどさすらえ人の感を深くし、余も妻も唯だまって歩いた。我儕われらの行衛は何処どこに落ちつくのであろう? 余等は各自てんでに斯く案じた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
中には随分ずいぶん正躰しょうたい見たり枯尾花かれおばな』というようなのもあります。
薄どろどろ (新字新仮名) / 尾上梅幸(著)
我も死してほとりせむ枯尾花かれおばな
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
其内ある日近所の辰さん兼さんが簌々さくさく簌々と音さして悉皆堤の上のをって、たばにして、持って往ってしまう。あとは苅り残されの枯尾花かれおばな枯葭かれよしの二三本、野茨のばらの紅い実まじりにさびしく残って居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)