しま)” の例文
旧字:
季節とは関係なしに工場の中は暑く、石灰粉の微粒は渦を巻いたり、しまを描いたりしながら、白くて厚い幕のように漂いあふれていた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
わたしが望んだごとく、われわれのうしろの氷面が破れて、細い水のしまが現われて来た。それが遠く全体にわたって拡がっている。
朝のこの時刻になると、晴れた日ならば、太陽はいつも長いしまをなして、部屋の右手の壁にすべり抜け、戸口の片隅を照らした。
近づくままに、彼女は月光のあかるいしまの中に、全身を現わした。顔は半面しか照し出されていなかったが、オールバックに結った額際は、すぐ倭文子であることがわかった。
第二の接吻 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
は沈んで、その代り空のところどころに赤味を帯びた夕映ゆふやけしまが輝やいてゐた。野づらには、ちやうど眉の黒いいきな新造が著る晴著の下着プラフタの縞柄みたいに、畠がつらなつてゐた。
季節とは関係なしに工場の中は暑く、石灰粉の微粒はうずを巻いたり、しまを描いたりしながら、白くて厚い幕のように漂いあふれていた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
蚊いぶしの煙が葭簾の隙間からしまのようになって外へながれ出るのを、信吉はぼんやり眺めながら、いつもの隅の場所に腰掛けて、飲んでいた。
嘘アつかねえ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ひときわ濃く、川霧がしまを描きながら巻いて来た。三人とも着た物がじっとりと湿っているし、髪毛には霧粒が美しく、微小な珠を綴っていた。
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
琅玕ろうかんがかった緑の深い色が流れたようにしまを描いているのも美しいし、なめらかな冷たい手触りや、しっとりとしたちょうど頃合の重さなども好きで
日本婦道記:墨丸 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)