曠野あれの)” の例文
その行燈の枕許まくらもとに、有ろう? 朱羅宇しゅらお長煙管ながぎせるが、蛇になって動きそうに、蓬々おどろおどろと、曠野あれの徜徉さまよう夜の気勢けはい。地蔵堂に釣った紙帳より、かえってわびしき草のねやかな。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
持って行きどころのない体が曠野あれのの真中に横たわっているような気がした。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
岩角ばかりで敷き詰めた、広い曠野あれのの真中で
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
曠野あれの湿潤うるおいなき地とは楽しみ
まぼろしのやうな蒸暑むしあつにはに、あたか曠野あれのごと瞰下みおろされて、やがてえてもひとみのこつた、かんざしあをひかりは、やはらかなむねはなれて行方ゆくへれぬ、……ひと人魂おにびのやうにえたのであつた。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)