時分時じぶんどき)” の例文
一通り熊の世話を焼いてしまってみると、さあ時分時じぶんどきだ——これからひとつ道庵先生のために、弁当を運ばねばならぬ時だと思い出してきました。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
こんなことで商売になるのかと心配したが、時分時じぶんどきでもない、午後三時頃に、僕の部屋以外にも、客の声がしていた。
神戸 (新字新仮名) / 古川緑波(著)
暫くすると、忠成はひよつくり其処そこへ顔を出した。ちやう時分時じぶんどきなので黙つてそこにあつた弁当箱を取り上げた。
時分時じぶんどきではあり、何もないけれど、お光さんの好きなうなぎでもそう言うからと、親子してしきりに留めたが、俥は待たせてあるし、家の病人も気にかかるというので
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
ちょうど時分時じぶんどきなので、アラスカへ誘う気なのだと察した貞之助は、今日もまた饗応きょうおうにあずかることは重ね重ねで心苦しいけれども、この機会に娘と親しんで見たくもあり
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
根岸ねぎし相坂あひざか團子屋だんごや屋臺やたいつた。……近所きんじよ用達ようたしがあつたかへりがけ、時分時じぶんどきだつたから、さゝゆきはひつて、午飯ひるますと、はら出來できたし、一合いちがふさけいて、ふら/\する。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
時分時じぶんどきには御飯をよばれては悠々と立ち帰るのだった。