時代とき)” の例文
私はときどき、あの先生は私のように子供の時代ときがなかったのか、あの先生のいまの心と、私のおさな心とがどうして合うものかとさえ思った。
幼年時代 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
「いや広言ではない。時代ときこそくだるが、わが柴家さいけは天子のえいだ。しかも証拠の丹書鉄券おすみつきも伝わっている」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あなたとわたくしとはおさな時代ときからのしたしい間柄あいだがら……ことにあなたが何回なんかいわたくし佗住居わびずまいおとずれていろいろとなぐさめてくだされた、あの心尽こころづくしはいまもうれしいおもひとつとなってります。
時代とき足利あしかが末葉まつようで、日本歴史での暗黒時代、あっちでも戦い、こっちでもいくさ、武者押しの声や矢叫やたけびの音で、今にも天地は崩れるかとばかり、尾張おわりには信長、三河には家康、甲斐かいには武田
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ゐられる時代ときではないのです。
酒場にて (新字旧仮名) / 中原中也(著)
今に見ろ、私をくるしめたもの、軽蔑したもの、低めたもの等が、ひとりで私のあたいを感じなければならない時代ときがあるに違いないと、強く信じた。
或る少女の死まで (新字新仮名) / 室生犀星(著)
ゐられる時代ときではないのです。
酒場にて(定稿) (新字旧仮名) / 中原中也(著)
それはまだ小児こども時代ときの純潔や叡智がそのまま温和にふとり育つて、それが正確に保存されてゐるからである。
抒情小曲集:04 抒情小曲集 (新字旧仮名) / 室生犀星(著)
かれの足音が表へ消えると私は静かに貧しかった時代ときの自分を考えた。
或る少女の死まで (新字新仮名) / 室生犀星(著)