春吉はるきち)” の例文
家には暮から重病で寝ている女房のおまつと、六つになる孫の春吉はるきちのたった二人だけ、淋しく留守をしていたと判って、これも疑いの圏外へそれてしまいます。
ぐずぐずせずと酒もて来い、蝋燭ろうそくいじってそれが食えるか、鈍痴どじさかなで酒が飲めるか、小兼こかね春吉はるきちふさ蝶子ちょうこ四の五の云わせず掴んで来い、すねの達者な若い衆頼も、我家うちへ行て清、仙、鉄、政
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
石太郎いしたろうの名人であるのは、浄光院じょうこういん是信ぜしんさんに教えてもらうからだと、みんながいっていた。春吉はるきち君は、そうかもしれないと思った。石太郎の家は、浄光院のすぐ西にあったからである。
(新字新仮名) / 新美南吉(著)
とうさんの田舍ゐなかはうにははたらくことのきなお百姓ひやくしやうんでます。いまでこそあの人達ひとたち苗字めうじひとはありませんが、むかし庄吉しやうきちとか、春吉はるきちとかの名前なまへばかりで、苗字めうじ人達ひとたち澤山たくさんあつたさうです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ここにいれば、これで、一生、誰もしゃれどは言わねえがんな。——天王寺の春吉はるきちらなど皆土地売って行って、今じゃ、けえって来たがっていっちが、ほんでもけえって来ることが出来ねえのだぢゅうでや。
土竜 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)