いにしえ)” の例文
いにしえの国主の貴婦人、簾中れんちゅうのようにたたえられたのが名にしおう中の河内かわち山裾やますそなる虎杖いたどりの里に、寂しく山家住居やまがずまいをしているのですから。
雪霊記事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
曰く李下に冠を整し瓜田に履を納れずとは何か。曰く寛政の三奇人とは誰ぞ。曰く何。曰く何と。もし審に此等の問に答得るの学力あらば誰か亦活弁とならんや。いにしえに在っても論語読み論語を知らず。
偏奇館漫録 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
伝え聞く、摩耶山忉利天王寺とうりてんのうじ夫人堂の御像おんすがたは、そのいにしえりょうの武帝、女人の産に悩む者あるをあわれみ、仏母ぶつも摩耶夫人まやぶにんの影像を造りて大功徳をしゅしけるを、空海上人入唐の時、我が朝にかしずき帰りしものとよ。
一景話題 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いにしえの秩序と静寧のうちいこひたるこそ嬉しけれ。
霊廟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
眠れるいにしえの花園の咲きてむらがる花の中