明石町あかしちょう)” の例文
その夜も、彼はただ一人で、冷い秋雨あきさめにそぼ濡れながら、明石町あかしちょう河岸かしから新富町しんとみちょう濠端ほりばたへ向けてブラブラ歩いていた。
人造人間事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
京橋区内では○木挽町こびきちょう一、二丁目へん浅利河岸あさりがし(震災前埋立)○新富町しんとみちょう旧新富座裏を流れて築地川に入る溝渠○明石町あかしちょう旧居留地の中央を流れた溝渠。
葛飾土産 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
築地明石町あかしちょうに山の井光起みつおきといって、府下第一流の国手がある、年紀としはまだわかいけれども、医科大学の業をえると、ぐ一年志願兵に出て軍隊附になった、その経験のある上に
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まだ時間があるからとおっしゃって、あそこはなんというとおりなの、明石町あかしちょう船澗ふなまのあたりにそっくりな河岸のレストラントで、見事な海老や生海丹なんかご馳走してくだすって、それから
ユモレスク (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
水圧工業会社の社長、鹿島銀造の家は京橋明石町あかしちょうの工場に接して建てられている。
水中の怪人 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
おばさんに手をひかれて明石町あかしちょう河岸かしをあるいてかにを取って遊んだことは一生忘れません。わたくしの一番幸福な思出は二ツとも水の流れているところです。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
丁度ちょうどそのころ、築地つきじ本願寺裏から明石町あかしちょうにかけて、厳重な非常警戒網がかれた。
東京要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
大川口のほうは舟松町、十軒町、明石町あかしちょうなどの町家が、広い川のかなたに平べったく並んでいた。——その北に面したほうに舟着きと門があり、門の左右に収容者たちの長屋が建っている。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
四谷新宿へ突抜けの麹町こうじまちの大通りから三宅坂みやけざか、日比谷、……銀座へ出る……歌舞伎座の前を真直まっすぐに、目的めあて明石町あかしちょうまでと饒舌しゃべってもいい加減の間、町充満いっぱい、屋根一面、上下うえした、左右、縦も横も
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この処築地明石町あかしちょう、明石病院の病室である。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)