早間はやま)” の例文
丁々坊 何か知らぬが、それはけ。はて、なんとやら、テンツルテンツルテンツルテンか、のこぎりをひくより、早間はやまな腰を振廻ふりまわいて。やあ。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そういううちも、丁目の三味線太鼓早間はやまに賑々しく地囃子が、水銀みずがねいろをした暮春の夕闇をかき乱すように聞こえてくる。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
得手えてでないところは早間はやまになるうれいがある。彼女の芸は鴈治郎がんじろうの芸と一脈共通のところがあるかと思われる。
豊竹呂昇 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
さては浮橋縫之助うきはしぬいのすけたがいに「顔と顔とを見合せて一度にわつと」嘆きさえすれば後は早間はやまに追込んで「鳥辺山とりべやま」の一段はすぐさま語り終られると知るものから
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
其の内でも私はお萩原様の家来同様に畑をうなったり庭を掃いたり、使い早間はやまもして、かゝあすゝぎ洗濯をしておるから、店賃たなちんもとらずにたまには小遣こづかいを貰ったり
「おばさん。きょうは三味線がのろかったぜ。もう少し早間はやまにね。いいかい」
両国の秋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
使い早間はやまには何うせ遊んでいるからと安吉を附けて置き、政七も仙太郎も重三郎も折々来ては、小三郎の心を慰めることを申しまするが、小三郎は只々ふさいで居まして