料紙りょうし)” の例文
はや遠寺とおでらのかねがひゞいてまいりお庭の方にほとゝぎすのなくねがきこえましたので、おくがたは料紙りょうしをとりよせられまして
盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
何者の子とも知れぬ藻という女子を相手にして、その歌というのを見て取らそう。料紙りょうし短冊たんざくにでもしたためてまいったか
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
『まだ、時刻もある故、その間に、お書遺かきのこしておく事でもあれば、それへ料紙りょうしすずりを上げてあるから、何なりとも』
夏虫行燈 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ややしばらくしてから葉子は決心するように、手近にあった硯箱すずりばこ料紙りょうしとを引き寄せた。そして震える手先をしいて繰りながら簡単な手紙を乳母うばにあてて書いた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
竜之助はそのまま次の室へ入って、机に向って暫らく茫然ぼうぜんと坐っていましたが、自分で燈火あかりをつけて、それから料紙りょうし硯箱すずりばこを取り出して何か書き出したものと見えます。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
お蓮様は裾を乱して、片隅の文机ふづくえの上の硯箱すずりばこと、料紙りょうし入れへかけ寄りながら
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
甲斐は机の上に料紙りょうしをひろげ、筆を取ってなにか書きはじめた。
たわけものめがッ。その方共も黒鍬組のはしくれであろう。下賤者ではあろうとも黒鍬組はとにもかくにも御直参の御家人じゃ。他愛もない幽霊の真似なぞするとは何のことかッ。腰本治右に申すことがある。少し痛いが待て。——梅甫、料紙りょうし
もう彼女は蚊帳の外にいて、硯筥すゞりばこ料紙りょうし入れから小刀や紙を取り出しながら、始終面白そうに笑いつゞけていた。
小姓までがあわてて彼のあとに従ってその居室へ入った。光春はすぐ料紙りょうしすずりを求め、もう書くべき文言は頭のうちに出来ていたものの如く、苦もなく筆を走らせた。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夫人は夫の言葉を聞くと、それを豫期していたものゝ如くお春に云いつけて料紙りょうし硯箱すゞりばこを取り寄せた。
「……寺僧、すずり料紙りょうしをかしてくれい。一つ二つではこまる。杯の数ほど、硯もたくさんに」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、いったが、すぐ思い直し——「いや、料紙りょうしすずりをもって来い。祐筆も眠たかろう」
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
尤も、格別の思召しで、料紙りょうしすずりの使用、風呂ふろくし道具の事、医薬などは差し許したが、それも一々箇条書にして、公儀へ伺いを出してからの事である。それを、火鉢などとは、専断至極な
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
直家は、恩を謝して、熊野牛王宝印くまのごおうほういん料紙りょうしに、誓約をしたためて差出した。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
料紙りょうしとすずりばこをこれへ」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
料紙りょうし硯筥すずりばこがあるか」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)