数寄者すきしゃ)” の例文
主人は代々上品な数寄者すきしゃであって、いろいろその頃の名工の作など集められた。それで師匠も辻屋に出入りをしておった訳である。
それがの正雪の絵馬であった。この会に集まるほどの者は、いずれも多左衛門に劣らぬ数寄者すきしゃであるから、勿論その絵馬を知っていた。
半七捕物帳:50 正雪の絵馬 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
少禄しょうろくの者ではまず手中しがたい! しがたいとするなら、いうまでもなく高禄の者が、それもよほどの数寄者すきしゃ好事家こうずかが、買うか、たせたかに相違ないのです。
手を貸したのは諸方に浮浪していた一族の誰彼たれかれ、南部家下屋敷の隣、昔数寄者すきしゃが建ててそのままになっていた庵を手に入れて、ここまで仕事を運んだのを平次に見破られたのです。
木母寺もっぽじには梅若塚うめわかづか長明寺ちょうみょうじ門前の桜餅、三囲神社みめぐりじんじゃ、今は、秋葉あきば神社の火のような紅葉だ。白鬚しらひげ牛頭天殿ごずてんでんこい白魚しらうお……名物ずくめのこの向島のあたりは、数寄者すきしゃ通人つうじんの別荘でいっぱいだ。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
壁に蔦などをわせて住んでいるが、必ずしも数寄者すきしゃというわけではない。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
有名な数寄者すきしゃでいらっしゃるし、わけても普請道楽というお噂だが、いったい、お住居すまいなどの間取りはどんな凝り方か、御邸内の図面でもあったら見たいものだが——と仰しゃるお方があるのだ。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これは、注文者がもし素人しろうと数寄者すきしゃとでもいうのであれば、あるいはそうすることも時宣じぎってかまわぬことでもあろうが、若井氏は商売人である。
茶事に用いる三つ羽箒には野雁やがんの尾羽を好しとするが、その中でも黒に白斑のあるのを第一とし、白に黒斑のあるのを第二とし、数寄者すきしゃは非常に珍重するので、その価も高い。
半七捕物帳:61 吉良の脇指 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
さかいや京の数寄者すきしゃが大勢集まった。いつか秀吉が、信長にささやいて
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あの竹内さんは数寄者すきしゃで変ったことが好きだから、町内の催しで、変った風をして行列の中に交ったのであろう、元禄風俗を研究したりしていなすったから