数〻しばしば)” の例文
旧字:數〻
その興業中川上は数〻しばしばわが学校に来りて、その一座の重なる者と共に、生徒に講談を聴かせ、あるいは菓子を贈るなどすこぶる親切叮嚀ていねいなりしが
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
その不快を極むるところの一路なるをも忌み厭ふにいとまあらずして渠身不相応なる大船の数〻しばしば出入するに徴して知るべし。
水の東京 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
儂はこれを思うごとに苦悶懊悩おうのうの余り、しば数行すこう血涙けつるい滾々こんこんたるを覚え、寒からざるに、はだえ粟粒ぞくりゅうを覚ゆる事数〻しばしばなり。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
松井町にては南に入りて小名木川に達するの一渠(この一水は中途二岐となりて、その一はただちに南に去つて小名木川に達すれども、他の一は数〻しばしば曲折して後富川町にて小名木川に会す)
水の東京 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
巧偸豪奪こうゆごうだつという語は、宋の頃から既に数〻しばしば見える語で、骨董好きの人〻には豪奪ということも自然と起らざるを得ぬことである。マアそれもじょすべきこととすれば恕すべきことである。
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
世にはこれよりも更にだいなる悪、大なる罪を犯しながら白昼大手を振りて、大道だいどう濶歩かっぽする者も多かるに、だいわすれてしょうを拾う、何たる片手落ちの処置ぞやなど感ぜし事も数〻しばしばなりき。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
数〻しばしば社参するうちに、修験者らから神怪幻詭げんきの偉いだんなどを聞かされて、身に浸みたのであろう、長ずるに及んで何不自由なき大名の身でありながら、葷腥くんせいを遠ざけて滋味じみくらわず、身を持する謹厳で
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)