故意わざと)” の例文
いえ、ただ通懸とおりかかった者でがんすがその方がえらくお塩梅あんばいの悪い様子、お案じ申して、へい、故意わざと。という声耳に入りたりけん。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
夜だからまさか阪本とは知らぬのでせうが、浪人と見れば何でも彼でも叩き斬ると云ふ奴等ですから、故意わざと私等に突当つて喧嘩をしかけたのです。
「すると」小一郎は故意わざとらしく、誇張した悲しそうな表情をしたが、「美しいお声の令嬢に、恋を捧げるということは、あなたにはお気に召さないようで」
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
宛然さながら、自分の持つてゐる鋭い刃物に対手が手を出すのを、ハラ/\して見てゐる様な気がしてゐたが、信吾の言語ことばは、故意わざとかは知れないが余りに平気だ、余りに冷淡だ。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
さりとは愛敬あいきやうひとあきれしことありしが、たびかさなりてのすゑにはおのづか故意わざと意地惡いぢわるのやうにおもはれて、ひとにはもなきにれにばかりらき處爲しうちをみせ、ものへばろく返事へんじしたことなく
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
手近の枝を引寄せて好惡よしあしかまはず申譯ばかりに折りて、投つけるやうにすたすたと行過ぎるを、さりとは愛敬の無き人とあきれし事も有しが、度かさなりての末には自ら故意わざとの意地惡のやうに思はれて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
手近の枝を引寄せて好悪よしあしかまはず申訳ばかりに折りて、投つけるやうにすたすたと行過ぎるを、さりとは愛敬あいけうの無き人とあきれし事も有しが、度かさなりての末にはおのづか故意わざとの意地悪のやうに思はれて
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)