擦寄すりよ)” の例文
とまた擦寄すりよった。謙造は昔懐むかしなつかしさと、お伽話とぎばなしでもする気とで、うっかり言ったが、なるほどこれは、と心着いて、急いで言い続けて
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「どこに」と女は崩した、からだを擦寄すりよせる。余の顔と女の顔が触れぬばかりに近づく。細い鼻の穴から出る女の呼吸いきが余のひげにさわった。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
平三郎はその手を払いけた。それでも婢は盃を放さずに、平三郎の傍へ擦寄すりよって往って無理に持たそうとした。平三郎はそれをまた押しのけた。
水面に浮んだ女 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
こは事難ことむづかしうなりぬべし。かなはぬまでも多少は累を免れんと、貫一は手をこまぬきつつ俯目ふしめになりて、つとめてかかはらざらんやうに持成もてなすを、満枝は擦寄すりよりて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
程よい人間を見るといきなり擦寄すりよる。絵をチラリと見せて、一枚一円とか二円とか云う。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
彼は擦寄すりより、擦寄りて貫一の身近にせまれり。浅ましく心苦こころくるしかりけれどぐべくもあらねば、臭き物に鼻をおほへる心地しつつ、貫一は身をそばめ側め居たり。満枝はなほも寄添はまほしき風情ふぜいにて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
擦寄すりよった気勢けはいである。
木精(三尺角拾遺) (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼は町の左側をこたびは貫一に擦寄すりよりて歩めり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
擦寄すりよつた氣勢けはひである。
三尺角拾遺:(木精) (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)