こす)” の例文
停車場ステエションかたを見ながら言つた、媼がしよぼ/\した目は、うやつて遠方のものにこすりつけるまでにしなければ、見えぬのであらう。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
啖壺たんつぼが備えてあっても衛生や公徳の何物たるを知らない連中は平気で床の上へ啖を吐いたり、つばを吐いたりして何の心だかわざわざそれを靴の底でこすひろげています。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
錢形平次のところへも、おびたゞしい忠告と、皮肉と、當てつこすりと、中傷の手紙が舞ひ込みます。
内心痛し、すこぶかゆしで、しわだらけの手の甲をあごの下でこすってござった。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)