搾取さくしゅ)” の例文
が、資本だの搾取さくしゅだのと云う言葉にある尊敬——と云うよりもある恐怖きょうふを感じていた。彼はその恐怖を利用し、度たび僕を論難した。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
哀れなガセビリたちを搾取さくしゅしている女郎上りのピー屋の女将を前にして、感動なんて言うのはおかしいかもしれないが、事実だった。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
ひどい封建時代に生れた搾取さくしゅ時代の民器に、何の美があり得ようというのである。これは誠に実情を知らない者の浅墓あさはかな非難に過ぎない。
改めて民藝について (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
そのために私は、金のある人々にき使われ、いじめられ、さいなまれ抑えつけられ、自由を奪われ、搾取さくしゅされ、支配されてきた。
色々な小分立や封建的な苛酷な搾取さくしゅをうけ、頭をはねられ、追いつめられた生活をしているので、何かのキッカケでよくストライキを起した。
工場細胞 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
国家の本質は、単に功利的な個人の道具でも、必要悪というようなものでも、階級的な搾取さくしゅ抑圧よくあつの手段でもない。
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
生きているということは搾取さくしゅしていることである。唯その程度に千差万別のちがいがあるばかりだ。此処まで押し詰めると理窟はなくなってしまうらしい。
錯覚した小宇宙 (新字新仮名) / 辻潤(著)
私のさみしいふところを搾取さくしゅしながら、かれらも幸福ではなかった。その期間、かれらは貪婪どんらんな漁夫でありわる賢い商人だったからだ。私は深く自分を恥じた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
対岸には、搾取さくしゅのない生産と、新しい社会主義社会の建設と、労働者が、自分たちのための労働を、行いうる地球上たった一つのプロレタリアートの国があった。
国境 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
社会には貧窮と不道徳とがあり、搾取さくしゅと戦争とがくり返されて、秩序と平和が常におびやかされている。「正直者が損をしない」社会は、実際に存在しないのである。
キリスト教入門 (新字新仮名) / 矢内原忠雄(著)
しかも父娘はこうして夜な夜な渭州いしゅうの紅燈街に、はかない四ツ竹と胡弓こきゅう合奏あわせて、露命もほそぼそしのいでいるありさまなのに、ねぐらに帰れば、かせぎの七分は、まず鬼の手に搾取さくしゅされてしまう始末。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そうじゃなくて、可哀そうな女工さんたちに、なんだか悪いわ。あんたの言う搾取さくしゅ——搾取の上に、のほほんとすわってるのは、いやだわ」
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
移行することに伴って生じた経済的搾取さくしゅ関係に、国家の起源を求めたりする説は、そのような学説の好例である。
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
だから彼はこれ以上、むりな搾取さくしゅを領下の百姓に求めはしない。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
例えばヘーゲルにいわせれば、国家は最高の道徳で、倫理的精神の現実体であるが、エンゲルスにいわせれば、国家は階級的な抑圧よくあつ搾取さくしゅの手段にすぎない。
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
こう言うんだが、あれも俺と同じ水呑み百姓のせがれなんだ。今のような世の中では、百姓が可哀そうだ。地主に搾取さくしゅされてる百姓も惨めなら、資本家に搾取されてる労働者も惨めだ。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
雑談のうちに、衆智しゅうちを、搾取さくしゅしているらしい。今も
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)