揺籠ゆりかご)” の例文
旧字:搖籠
シンタは北海道の日常語では揺籠ゆりかごをさす。古謡の中では、神々はこれに乗って天空を自由に駆けめぐるように述べられる。[183]
えぞおばけ列伝 (新字新仮名) / 作者不詳(著)
或る日私はね、揺籠ゆりかごに乗ったままお庭の何処どこかへ置かれていたのよ。私の頭の上には広い広い青い幕が丸く一ぱいに広がっていたのよ。
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
然れどもいやしくも円満なる終極の天地を念々ねん/\して吾人の理想となし得る限りは、「平和」の揺籠ゆりかご遂に再び吾人を閑眠せしむる事ある可きを信ず。
「平和」発行之辞 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
これを、上へ下へ動かすと、子供は快く寝るが、男の子守はやってみるといい。女はうかと思うが、揺籠ゆりかごよりは柔かく、子供にはいい籠である。
死までを語る (新字新仮名) / 直木三十五(著)
青年は、好事ものずきにも、わざと自分の腰をずらして、今度は危気あぶなげなしに両手をかけて、揺籠ゆりかごのようにぐらぐらと遣ると
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それから母と娘とは角の部屋から寝台ねだい揺籠ゆりかごとを運び出して跡を片付けた。そしてセルギウスをそこへ案内した。
右の奇怪な女人が抱き締めた他のものというのは、おさな児の揺籠ゆりかごではなくて、玄関の松の大木でありました。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
セシルは子供の揺籠ゆりかごのそばにすわっていた。通りがかりに立ち寄ったアルノー夫人が、子供の上に身をかがめてのぞき込んでいた。クリストフは夢想にふけっていた。
「まあ、なんて静かに水が揺れてること! まるで子供の揺籠ゆりかごみたいだわ!」
なあんだ、越後にだつてあるぢやないか、おぢいさんやおばあさんが揺籠ゆりかごを揺すりながら、乳母車を押しながらうたふのと同じぢやないか。しかし、ちよつと違ふところもある。いややつぱり違ふ。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
羽毛はねしつらへし揺籠ゆりかご
文覚は先程から船底にあって、木の葉に揺れる舟を心地よい揺籠ゆりかごと心得たかあたりはばからぬ大鼾おおいびきで、荒れ狂う海など知らぬ気に眠りつづけている。