揚戸あげど)” の例文
土間の右から数えて五番目の踏板から下に降りて、そこの土の窪みだけを踏み、揚戸あげどを開きにゆくといった具合に……。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
その声を聞いて、彼はふいに目をさまし、「寝所」の外にはい出し、金網の少し開いた所をまたていねいにしめ、それから揚戸あげどを開いて、おりてきたのであった。
「まだ町住いの事は御存じないのだから、失礼ながらわたしたち夫婦でお指図さしずをいたして上げます」といったのである。夫婦は朝表口の揚戸あげどを上げてくれる。晩にまた卸してくれる。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
くれと聲をかけしかば喜八ハイと答へて揚戸あげどあげときたもとはす引裂ひきさけてあるゆゑ軍平はとめて見るに縞柄しまがらも昨夜の布子ぬのこ相違さうゐなければすぐに召捕んとせしが取迯とりにがしては一大事と然有さあらていにて煙草を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
春の月縁ゑん揚戸あげどの重からば逢はで帰らむ歌うたへ君
舞姫 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)