捨台辞すてぜりふ)” の例文
顔子狗は、捨台辞すてぜりふをのこして、一行の方を振りかえりもせず、すたすたと、水牛仏の前をすり抜けようとした——その瞬間のことであった。
鬼仏洞事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「そうそうその新聞のね、三枚目を読んでみな。お前達の薬があるよ。」これを捨台辞すてぜりふにして去らんとするを、綾子は押止おしとど
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すると先生やるなら勝手にやり給え、君もも少しすると悟るだろう、要するに理想は空想だ、痴人の夢だ、なんて捨台辞すてぜりふを吐いて直ぐって了った。
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
額からぽたぽたこぼれる血をぬぐい「覚えてなはれ」と捨台辞すてぜりふを残して憤然ふんぜんと座を立ちそれきり姿を見せなかった
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
紳士は捨台辞すてぜりふをかう言ひ置いて、鄭重にお辞儀をして出て往つた。紳士とは誰あらう、イリノイス州の上院議員ジエームス・ミルトン・レヰス氏であつた。
でも、私がその場にがんばっているので、とうとう奴は捨台辞すてぜりふをのこして出てゆきました。それから、私もちょっと玄関口で奥さんを慰めておいて帰ってきました。
誰が何故彼を殺したか (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
夫人は、車窓から、その繊細な上半身を現しながら、見送つてゐる人達に、さうした捨台辞すてぜりふを投げた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
これに荒胆あらぎもを挫がれた新蔵は、もう五分とその場に居たたまれず、捨台辞すてぜりふを残すのもそこそこで、泣いているお敏さえ忘れたように、蹌踉そうろうとお島婆さんの家を飛び出しました。
妖婆 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
不思議なことには、初めから言葉一つ口に出さなかったし、立去る時にも捨台辞すてぜりふ一つせず、唾一つひっかけなかった。そして俺達は黙りこくったまま、広い通りを十町余り歩いてきた。
神棚 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
夫人は、車窓から、その繊細せんさいな上半身を現しながら、見送っている人達に、そうした捨台辞すてぜりふを投げた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
貫一は、窮屈きゅうくつな恰好で捨台辞すてぜりふを重傷の刑事に残し、すたすたといってしまった。
けだし当時、夫婦を呪詛じゅそするという捨台辞すてぜりふを残して、わが言かくのごとくたがわじと、杖をもって土を打つこと三たびにして、薄月うすづきの十日の宵の、十二社の池の周囲を弓なりに、飛ぶかとばかり走り去った
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
また、譬へ自分が絶対に負けた時にも、人間に付き纏ふ負け惜しみは、きつと相手を不快にするやうな捨台辞すてぜりふとなつて、現はれずには居なかつた。兎に角、勝つても負けても不快だつた。
我鬼 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
と、師父ターネフは、捨台辞すてぜりふをのこして、うしろへ下った。
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
動坂三郎は凄い捨台辞すてぜりふを残して、姿を廊下の方に消した。
深夜の市長 (新字新仮名) / 海野十三(著)