挑戦ちょうせん)” の例文
旧字:挑戰
彼女はごくすらりとした身体つきで、服の着つけもよく、誘惑的な挑戦ちょうせん的な姿だったが、わざとらしい馬鹿げた嬌態きょうたいをいつも見せていた。
ショーペンハウエル的厭人えんじん感のニヒリズムから、毒々しい挑戦ちょうせん的の態度に於て、浪漫派の感傷的なる愛や人道主義やを、梅毒のように不潔視した。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
広子はいつか声の中にはいった挑戦ちょうせんの調子を意識していた。が、辰子はこの問にさえ笑顔えがおを見せたばかりだった。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
去年の秋「心から春待つ園」の挑戦ちょうせん的な歌をお送りになったお返しをするのに適した時期であると紫の女王にょおうも思うし、源氏もそう考えたが、尊貴なお身の上では
源氏物語:24 胡蝶 (新字新仮名) / 紫式部(著)
用心よりも挑戦ちょうせんのようだったが、三十四五人中の二十九番を中どころと信じている男だから仕方がない。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
お秀は鋭どい声でこうはなった。しかし彼女の改まった切口上きりこうじょうは外面上何の変化も津田の上に持ち来さなかった。彼はもう彼女の挑戦ちょうせんに応ずる気色けしきを見せなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
狂乱せるしかも勇壮なる挑戦ちょうせんであった。なぜなれば、この古い郭外は一個の英雄だからである。
この雑誌の投じた楽界の影響は甚だ大きく、ピアノ詩人と言われた天才ショパンを世に紹介したばかりでなく、シューマンは二つの仮名ペンネームの下に、勇ましく既成楽壇に挑戦ちょうせんしたのである。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
両のももで私の胴を、そしてその腰部ようぶで私の腰部をというぐあいに、字義どおりの馬乗りであって、若い女性からそんな挑戦ちょうせんを受けたことのない私は、その屈辱的な姿態の恥ずかしさに狼狽ろうばい
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
二三日してから法科がまた口惜しがって挑戦ちょうせんをして来た。その時は四分の力漕をやってこっちが半艇身ほど敗けた。けれども法科とおっつかっつに行くというのはもう紛れもない事実であった。
競漕 (新字新仮名) / 久米正雄(著)
荘田は、直也と面と向って立つと、直ぐ挑戦ちょうせんの第一の弾丸を送った。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
とうとう、かっぽれが固パンに敢然と挑戦ちょうせんしたのだ。
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
挑戦ちょうせん
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ドイツ国民の多数は、そういう挑戦ちょうせんに少しも関係するところがなかった。いずれの国においても善良な人々は、平和に暮らすことしか求めない。
今記憶している限りでも、すくなくとも五人の詩人が、公開の紙上で僕の詩論に挑戦ちょうせんしている。僕は常に注意して、これ等の人の議論を読んでる。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
一方文壇の内部からは、あの小児病的情熱の無産派文学が興ってきて、過去の死にかかった文壇に挑戦ちょうせんしている。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
結婚は自然にたいする一つの挑戦ちょうせんであること、人は自然に向かって一度手袋を投ずるときには、自然がかならずそれに応ずるものだと期待していなければならないし
いったい彼女の挑戦ちょうせん的な信心の中で、彼女が信仰に帰依させようと願ってる伯父にたいする実際の愛情と、伯父をいやがらせて覚える喜びの念と、どちらがより強いのか、わからなかった。
そういう卑劣な敵意の感情は、おそらく彼女を猛然と挑戦ちょうせん的になしたかもしれない。しかし彼女は自分のうちに、敵たるその社会のパリサイ人的精神をになっていた。教育は彼女の天性をたわめていた。