扮装でたち)” の例文
旧字:扮裝
こけかとゆる薄毛うすげ天窓あたまに、かさかぶらず、大木たいぼくちたのが月夜つきよかげすやうな、ぼけやたいろ黒染すみぞめ扮装でたちで、かほあを大入道おほにうだう
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
彼も大小の岩を飛び越えねばならなかった、山蔦やまづたすがってあぶない綱渡りをせねばならなかった。洋服扮装でたちの彼は、草鞋わらじ穿いて来なかったのを悔いた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
一座の中でも、背の低い、色の黒い、有るか無きかの髯を生やした、洋服扮装でたち醜男ぶをとこが、四方八方に愛嬌を振舞いては、軽い駄洒落を云つて、顔に似合はぬ優しい声でキヤツ/\と笑ふ。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
お貞はいかに驚きしぞ、戸のあくともろともに器械のごとくね上りて、夢中に上り口に出迎いでむかえつ。あおくなりて瞳を据えたる、沓脱くつぬぎの処に立ちたるは、洋服扮装でたちの紳士なり。
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と見ると黒髪に変りはないが、脊がすらりとして、帯腰のなびくように見えたのは、羽織なしの一枚あわせという扮装でたちのせいで、また着換えていた——この方が、姿もく、よく似合う。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)