打坐ぶっすわ)” の例文
降らないでもない、糠雨ぬかあめの中に、ぐしゃりと水のついた畔道あぜみち打坐ぶっすわって、足の裏を水田みずたのじょろじょろながれくすぐられて、すそからじめじめ濡通って
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ぼんやりと小さくしゃがんで、ト目に着くと可厭いや臭気においがする、……つち打坐ぶっすわってでもいるかぐらい、ぐしゃぐしゃとひしゃげたように揉潰もみつぶした形で、暗いから判然はっきりせん。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
煙草たばこの煙を、すぱすぱと吹く。溝石の上に腰を落して、打坐ぶっすわりそうにしゃがみながら、くわえた煙管きせるの吸口が、カチカチと歯に当って、ゆがみなりの帽子がふらふらとなる。……
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あとのは張詰めた気がゆるんだか、足取が乱れて、あっちへふらり、こっちへひょろり、一人は危険けんのんな欄干にもたれかかりましたし、もう一人は何の事はない、そこへ打坐ぶっすわってしまったんです。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
自分も打坐ぶっすわり込んで、意気地はがあせん、お念仏をとなえ出した。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)