懸額かけがく)” の例文
かねてからわが座敷の如何いかにも殺風景なのを苦に病んでいた彼は、すぐ団子坂だんござかにある唐木からき指物師さしものしの所へ行って、紫檀したん懸額かけがくを一枚作らせた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いつ贋物がんぶつで辛抱したら、格安に出来上るだらうと、懸額かけがくから、軸物、屏風、とこの置物まで悉皆すつかり贋物がんぶつで取揃へて、書斎の名まで贋物堂がんぶつだうと名づけて納まつてゐた。
贋物 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
それは今の名勝めいしょう絵葉書の如く、シネマ俳優の肖像の如くさかんに作られ、そして、それは逆に外国に輸出されたり、あるいは散髪屋風呂屋の懸額かけがくとして愛用されたり、品の悪い柱がけとして用いられたり
楢重雑筆 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
白鳥しらとりのみねの樹間じゅかんにみえる大鳥居おおとりい懸額かけがくを、キッと横ににらんだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この見飽みあきたる懸額かけがく
悲しき玩具 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
健三は床の間に釣り合わない大きな朱色の花瓶はないけを買うのに四円いくらか払った。懸額かけがくあつらえるとき五円なにがしか取られた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いつ贋物がんぶつで辛抱したら、格安に出来上るだらうと、懸額かけがくから、軸物、屏風、とこの置物まで悉皆すつかり贋物がんぶつで取揃へて、書斎の名まで贋物堂がんぶつだうと名づけて納まつてゐた。
同時に彼は新らしくとこに飾られた花瓶はないけとその後に懸っている懸額かけがくとを眺めた。近いうちにそでを通すべきぴかぴかする反物たんものも彼の心のうちにあった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)