愚蒙ぐもう)” の例文
そしてかかるどん底への沈淪ちんりんにおいて、最後の深みに陥ってる彼らは最後の変容を受けていた。愚蒙ぐもうに変じた無知は絶望に変じた知力と同等だった。
世人の長い不理解と彼らのいやすべからざる愚蒙ぐもうさとを経験することによって、心の晴穏を真の芸術家は得るものであるが、クリストフにはそれが欠けていた。
今にいたつて考へて見れば、我ながら余りの愚蒙ぐもう軽忽けいこつとにあきれるばかりです、私は初め山木君——貴嬢あなたの父上の御承諾を得ました時、既に貴嬢の御承諾を得たるが如く心得、歓喜の余り
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
同じく年老いた童貞の女で、名前をヴォーボアと言い、全然愚蒙ぐもうな婆さんであって、ジルノルマン嬢はそのそばで一つの俊敏しゅんびんわしたるの愉快を感じていた。
当時の彼の作品はことごとく、真実と誇張との、明敏な活力とのぼせ上がった愚蒙ぐもうとの、混合であった。
ぼくの愚蒙ぐもうを忘れてくれ。君は最もりっぱな人だ。君の小指一本だけでも、この馬鹿なクリストフ全体よりまさっている。君は賢いやさしい愛情の宝をもっている。
愚蒙ぐもう欺瞞ぎまん憎悪ぞうおや虚栄や悲惨、などの上にはるかにそびえ、蒼空そうくうのうちに住み、あたかも高山の頂が地震を感ずるのみであるがように、ただ宿命の深い地下の震動を感ずるのみである。
一般の愚蒙ぐもうと戦い、現時の勝利者らの凡庸ぼんようさを暴露ばくろし、馬鹿者どもの手中に渡されてる無名孤独な芸術家を擁護し、服従をのみ知ってる人々の精神に帝王の精神を課し得る者が
世は大なる愚蒙ぐもうにすぎず、夏の盛り、緑の月に、刈られたまぐさの大なる一皿の茶をかぎに腕に女を擁して野へ行き得る時に、あのばか者らは、互いに争いなぐり合い殺し合おうとしている。
ごくパリー式な婢僕ひぼくの軽薄さと、自分にわからないものしか賞賛しないごく田舎いなか式な婢僕の深い愚蒙ぐもうさとから、離れていたので、その明識でもって彼女は、遊戯的な音楽やつまらぬ饒舌じょうぜつなど
睫毛まつげもりっぱだ。いいかね、お前たちは本当の道を踏んでるということをよく頭に入れとかなくてはいかん。互いに愛し合うんだ。愛してばかになるんだ。愛というものは、人間の愚蒙ぐもうで神の知恵だ。
彼は愚蒙ぐもうな追従者らにとりまかれ、また、同じく愚蒙な誹謗ひぼう者らにとりまかれていた。彼は強い性格でなかったから、誹謗者らのためにいらだちやすくなされ、味方のために柔惰になされていた。