)” の例文
市郎はいて又燐寸を擦ったが、胸の動悸に手はふるえて、幾たびか擦損すりそんじた。彼はいよいれて、一度に五六本の燐寸を掴んで力任せに引擦ひっこすると、火はようやく点いた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
オイオイお前は何処どこへ行くと脊後うしろから声をかけたが、小僧は見向きもせず返事もせず、矢はり俯向きしまま湿れて行く、此方こなたれて、オイオイ小僧、何処へ往くのか知らぬが
河童小僧 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
(お菊は少しくれたる気味にて皿を片づけてゐたりしが、また手をやすめて考へる。)
番町皿屋敷 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
巡査はいよいよれて、力一ぱいに強くくと、彼女かれ流石さすが二足ふたあしばかり踉蹌よろめいた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
もう一日もあの屋敷にはゐられないから暇を貰つてくれと、今年二十一になる武家の女房がまるで駄々つ子のやうに、たゞ同じことばかり繰返してゐるので、堪忍強い兄もしまひにはれ出した。
半七捕物帳:01 お文の魂 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
対手あいては相変らず平気で笑っているので、巡査も少しれ出した。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)