悶死もんし)” の例文
そこで彼等は拷問せられて、廃太子道祖王、黄文王は杖に打たれて悶死もんしをとげ、古麿と東人も拷問ごうもんに死んだ。生き残った人々は流刑に処された。
道鏡 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
全く、暑くて悶死もんししそうだ。どっかに、おおきな水たまりはありませんかね。鯨の如く汐を噴いてみたいのですよ。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
そうなると、勿論算哲の悶死もんしは、伸子の親殺しファテールテーツングであり、父よ吾も人の子なりパテル・ホモ・スム——の一文は、当然その深刻をきわめた、復仇の意志にほかならないのだった。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
父は芦に串刺くしざしにされて悶死もんししたそうです。そして父がみすべって落ちたと言いふらさせたのです。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
南部なんぶの山中からけ出した十六歳の少年が仙台で将軍の応接間おうせつまの椅子に先ず腰かけて「馬鹿ッ!」と大喝だいかつされてから、二十八歳の休職士官が失意失恋故山に悶死もんしするまで
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
悲憤のうちに悶死もんししたのは当然なことにちがいなく、しかし、その臨終のときに父親は、まだいたいけな子娘だった彼女ら姉妹に、おどろくべき一語を言いのこしたのです。
彼女は、どこからか迷い込んで来たポインター雑種の赤犬を一匹、台所のタタキの上につないで、バタを塗ったジレットの古刃ふるはを三枚ほど喰わせて、悶死もんしさせているのであった。
冗談に殺す (新字新仮名) / 夢野久作(著)
縦令たとい何ものかを与えたとしても、それは全然他を愛する為めの生存に必要なために与えたのですか。然し与えられない為めに悶死もんしする人がこの世の中には絶えずいるのですね。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
更にまた四十歳前後で死んでゐたら惜しむべき新進作家といはれたかも知れない。若しまた五十歳前後で死んでゐたら、女房に逃げられて二児をかゝへながら悶死もんししたといはれたであらう。
老残 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
望児山とも望小山とも云ひ、昔科挙くわきよ(官吏登庸試験)に応じて都へ行つた子の帰るのを、其母が此山に登つて日日待ちこがれながら終に悶死もんししたと云ふ伝説を以て有名な山である。良人の歌に
血をふいて悶死もんししたって
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)