悠々閑々ゆうゆうかんかん)” の例文
すぐあとから泰軒先生が、一升徳利を片手にぶらさげ、ひげの中から生えたような顔に微笑を浮かべて悠々閑々ゆうゆうかんかんとついて来るのだった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そこで兵馬は、先に立って歩き出したが、以前のように、両腕を胸に組み上げながら、悠々閑々ゆうゆうかんかんと歩いていても、それでも女は歩み遅れる。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
おりた瞬間からこの男、どこぞ遊び場のかえりでもあるような、悠々閑々ゆうゆうかんかんたる歩きぶりだ。素袷すあわせにやぞうをこしらえて、すたすたと表門の方へと廻っていった。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
まくらもとへあの地図をひろげてしきりに催促いたしましたが、名人の胸中にはなんの成算あってか、すでに悠々閑々ゆうゆうかんかんと夢の国にはいっているらしい様子でありました。
猪のあぶら松脂まつやにとを煮溜めた薬煉くすね弓弦ゆづるを強めるために新らしく武器庫ぶきぐらの前で製せられた。兵士つわものたちは、この常とは変って悠々閑々ゆうゆうかんかんとした戦いの準備を心竊こころひそかわらっていた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
各方面からの命いは猛烈をきわめたもので、本人はすっかりその効果を信じているから、サンラザアルの刑務所で悠々閑々ゆうゆうかんかん、あの嘘八百の告白体自伝はここで書いたのだ。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
しかも彼等はすこぶる悠々閑々ゆうゆうかんかんたる物で、先刻さっきから這入るものはあるが出る物は一人もない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と、思わず左膳は、一眼をきらめかして、驚異七分に懐しさ三分の叫びをあげたが、橋の上の泰軒居士は、悠々閑々ゆうゆうかんかんたるもので
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
四方の峰から、雪が一日一日に、谷に向って強い力でしてくる中を、毎日、悠々閑々ゆうゆうかんかんとして散歩にであるく、わたしをのんきだとは思わない……?
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そうしているところへ、松本の町の方から、悠々閑々ゆうゆうかんかんとして、白木の長持をかついだ二人の仕丁しちょうがやって来ました。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
徳川の世を万代不易ばんだいふえきと信じていたように、まことに悠々閑々ゆうゆうかんかんたる時代だったもので——。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
かくて、この三位一体は、山科から醍醐だいごへの道を、小春日をいっぱいに浴びて、悠々閑々ゆうゆうかんかんと下るのであります。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
兵馬は、子供に若干いくらかの手間賃を与えて、またも悠々閑々ゆうゆうかんかんとして、松本平へ下りました。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
悠々閑々ゆうゆうかんかんと大八車が進んで行くものですから、あっといって、やや心を強くしました。
大菩薩峠:30 畜生谷の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
この下を二人が悠々閑々ゆうゆうかんかんとそぞろ歩きながら、前なるは弁信法師、後ろなるはお銀様が、「易」というものを話題として、説き去り説き来ろうとする形勢を感得したものですから、せっかく
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
悠々閑々ゆうゆうかんかんとして、六千尺の高原の萱戸かやとの中を、女が一人歩きして来るのですから、これは、山賊、猛獣、毒蛇の出現よりは、武者修行にとっては、意表外だったというのも聞えないではありません。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
悠々閑々ゆうゆうかんかんたる月の夜道で、二人は行手の山の品さだめをしました。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それと知るや知らずや、お絹は悠々閑々ゆうゆうかんかんとお化粧をこらしながら
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)