“恋(こひし)” の例文
旧字:戀
「お口ぢやさう有仰(おつしや)つても、実はお嬉(うれし)いので御座いませう。あれ、ああしちや考へてゐらつしやる! そんなにも恋(こひし)くてゐらつしやるのですかね」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
此の御方を母とし、御前様(おんまへさま)を夫と致候て暮し候事も相叶(かな)ひ候はば、私は土間に寐(い)ね、蓆(むしろ)を絡(まと)ひ候(さふらふ)ても、其楽(そのたのしみ)は然(さ)ぞやと、常に及ばぬ事を恋(こひし)く思居りまゐらせ候。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
先づ衣桁(いこう)に在りける褞袍(どてら)を被(かつ)ぎ、夕冷(ゆふびえ)の火も恋(こひし)く引寄せて莨(たばこ)を吃(ふか)しゐれば、天地静(しづか)に石走(いはばし)る水の響、梢(こずゑ)を渡る風の声、颯々淙々(さつさつそうそう)と鳴りて、幽なること太古の如し。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)