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御短刀
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おたんたう
宿し奉りし處
御部屋住の
儀成ば後々召出さるべしとの御約束にて
夫迄は何れへ成とも身を
寄時節を待べしとの上意にて
御墨附御短刀を
宿し奉りし上は
何卒御出生の
御子を世に
立度存じ奉れば
後來迄も御見捨なき爲に
御證據の品を
下し置れ度と願ければ徳太郎君も道理に
思し召て
御墨付に
御短刀を
添て下されけり澤の井は
押戴き
御短刀を
出るや否や下に/\の
制止の
聲々滯ほりなく渡邊橋の
旅館にこそ歸りける今は
誰憚る者はなく幕は
玄關へ
閃き表札は雲にも
屆くべく恰も
旭の
昇るが如き
勢ひなれば
町役人どもは晝夜
相詰いと
嚴重の
欵待なり
扨御城代には
御墨附の
寫し并びに
御短刀の
寸法拵へ迄
委敷認め
委細を