御成街道おなりかいどう)” の例文
木更津きさらづ汐干しおひの場の色彩はごちゃごちゃして一見いやになりました。御成街道おなりかいどうにペンキ屋の長い看板があるから見て、御覧なさい。
虚子君へ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
どこへ行くのか知らん、机竜之助は七ツさがりのを背に浴びて、神田の御成街道おなりかいどうを上野の方へと歩いて行きます。小笠原左京太夫さきょうだゆうの邸の角まで来ると
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それで、今度は普通のチャボの、つまりせいの低い方のを探したいと思い、御成街道おなりかいどう錺屋かざりやに好いのがいるという話を聞いたので、また出掛けて行きました。
その頃、男爵とウェイトレス真弓とは、御成街道おなりかいどうを自動車で走っていた。二人は、こんな会話をしていた。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
さて師匠存生中府下の各寄席よせで演じ、または雑誌にて御存じの業平文治は、安永の頃下谷したや御成街道おなりかいどうの角に堀丹波守ほりたんばのかみ殿家来、三百八十石浪島文吾なみしまぶんごという者のせがれでございまして
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そこは、御成街道おなりかいどう広小路ひろこうじにかわろうとするかどであった。一方に、湯島天神ゆしまてんじんの裏門へ登る坂みちが延びていた。そこのところに、つじ待ちの駕籠屋かごやが、戸板をめぐらして、股火またびをしていた。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ところが実際は、その乱暴人が大手を振って御成街道おなりかいどうを引上げるのを見た者があるということであります。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
当時御成街道おなりかいどうを真正面から官兵を指揮して黒門口を攻撃したのは西郷従道さいごうつぐみちさんであったといいます。
同朋町どうぼうちょうから金沢町、夜眼にも光る霙のなかを駕籠は御成街道おなりかいどうへさしかかった。
何う成るか此方こちらも怖いのに心急こゝろせくから、其の儘に藤川庄三郎は、五百円と時計と持って御成街道おなりかいどうかたに参りますと、見送った新助はのりに染ったなりひょろ/\出て、向うの中坂下なかざかしたについて
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
此の人は以前下谷したや御成街道おなりかいどう堀丹波守ほりたんばのかみ様の御家来で、三百八十石頂戴した浪島文吾なみしまぶんごと云う人の子で、仔細あって親諸共もろともに浪人して本所業平村に田地でんじを買い、何不足なく有福に暮してりましたが
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)