当嵌あてはま)” の例文
旧字:當嵌
外国の用語だとコンストラクションというようなことに関係するのであろうが、向うの人の言っている言葉では当嵌あてはまらないようである。
回想録 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
三十年前の保吉の態度は三十年後の保吉にもそのまま当嵌あてはまる態度である。代赭色の海を承認するのは一刻も早いのに越したことはない。
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そこへ洩れてくる虫の音と夜風に、短檠たんけいの灯はほのかにたえずうごいている。そしてちり一つない婚礼の席は、華燭かしょくという文字には当嵌あてはまらないほど仄暗ほのぐらかった。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぎゃあぎゃあいうとは当嵌あてはまった言葉であった。こういう反対を受けてピューの憤怒はますますひどくなった。
逸興という言葉はぴったり当嵌あてはまらぬかも知れぬが、何か興の字のついた気持であることはいうまでもない。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
然し、それは可成実際に遠いもので、私が覚えている毛沼博士の扉について、更に委しく婆やの説明を聞くと、それらの作家の考案は決して当嵌あてはまらないのだった。
血液型殺人事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
実在界とはいわゆる認識形式に当嵌あてはまったもののみである。知られたものである、知るものではない。私は古来の伝統の如く、哲学は真実在の学と考えるものである。
デカルト哲学について (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
菅が自から評して「山賊」と言ったのは、捨吉自身の写真姿の方に一層よく当嵌あてはまるように思われた。捨吉は友達の言葉をそのまま自分の上に移して、「まるでこの髪は百日鬘ひゃくにちかずらだ」
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
こんな風に考えて見ても、此婦人けには其どれもが当嵌あてはまってれない様な気がした。
偽刑事 (新字新仮名) / 川田功(著)
知られる限りの道釈のうちにも、英雄の間にも、この像に当嵌あてはまるべき人物を見出すことができない。世間には、わかってもわからなくても、どうでもいい事がある。ぜひともわかりたいことがある。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
奮闘克己という文字に当嵌あてはまった彼女だ。
松井須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
この解釈はここにも当嵌あてはまるべきものと信ずる。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)