弥次郎兵衛やじろべえ)” の例文
東海道中膝栗毛のこと 十遍舎ぺんしゃ一九の書いた『東海道中膝栗毛ひざくりげ』という書物をご存じでしょう。弥次郎兵衛やじろべえ、喜多八の旅行ものがたりです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
どの店にも大きな人形を飾ってあるじゃないか、赤い裲襠しかけを着た姐様ねえさんもあれば、向う顱巻はちまきをした道化もあるし、牛若もあれば、弥次郎兵衛やじろべえもある。
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小光こみつはもっとさかんに御書きになって可然候。決して御遠慮被成間敷候。今消えては大勢上不都合に候。鼠骨そこつでも今日の弥次郎兵衛やじろべえの処は気に入る事と存候。
漱石氏と私 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
さればまことに弥次郎兵衛やじろべえの一本立の旅行にて、二本の足をうごかし、三本たらぬ智恵ちえの毛を見聞を広くなすことの功徳くどくにて補わむとする、ふざけたことなり。
突貫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
時には細い短い竹を団栗の頭へ挿して小さい独楽を作った。それから弥次郎兵衛やじろべえというものを作った。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
鈴蘭燈すずらんとうの強烈なネオンが眼にちかちかと刺すように感じ、彦太郎は蹣跚まんさんたる足どりで、人混を縫いながら、劇場のある横町に入りこんで来て、弥次郎兵衛やじろべえというおでん屋に入った。
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
忌々いまいましいなあ、道中じゃ弥次郎兵衛やじろべえもこれに弱ったっけ、たまったものではないと、そっ四辺あたりみまわしますると、ちり一ッも目を遮らぬこの間の内に床が一つ
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ここは弥次郎兵衛やじろべえ喜多八きだはちが、とぼとぼと鳥居峠とりいとうげを越すと、日も西の山のに傾きければ、両側の旅籠屋はたごやより、女ども立ちでて、もしもしお泊まりじゃござんしないか、お風呂ふろいていずに
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さればお紺の婀娜あだも見ず、弥次郎兵衛やじろべえ洒落しゃれもなき、初詣ういもうでの思い出草。
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
年配六十二三の、気ばかり若い弥次郎兵衛やじろべえ
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)