幾世いくよ)” の例文
うんと踏ん張る幾世いくよの金剛力に、岩は自然じねんり減って、引き懸けて行く足の裏を、安々と受ける段々もある。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
こゝ長門國ながとのくに阿武郡あふのごほりはぎは江戸より路程みちのり二百七十里三十六萬五千ごく毛利家の城下にてことにぎはしき土地なり其傍そのかたはらに淵瀬ふちせといふ處ありむかし此處このところはぎの長者といふありしが幾世いくよ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
大利根おおとねの水の、下総しもうさうしおがあって、坂東平野は幾たびも泥海に化し、幾千年のあいだ、富士の火山灰はそれを埋め——やがて幾世いくよをふるうちに、よしあしや雑木や蔓草つるくさがはびこって
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
幾世いくよなやみの羽音はおとさへ
草わかば (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
あらそひ入り來る故實に松葉屋の大黒柱だいこくばしら金箱かねばこもてはやされ全盛ぜんせいならぶ方なく時めきけるうちはや其年も暮て享保七年四月中旬なかば上方かみがたの客仲の町の桐屋きりやと云ふ茶屋より松葉屋へあがりけるに三人連にて歴々れき/\と見え歌浦うたうら八重咲やへざき幾世いくよとて何も晝三ちうさん名題なだい遊女を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)