幕明まくあき)” の例文
きのうの事は幕明まくあきの音楽で、せわしい調子の中へ、あらゆるモチイヴを叩き込んだものに過ぎないので、これからが本当の曲になると云いたいのですが、あなたには
小説物語には作者みずから出でて本文ほんもんと関係なき勝手の広告をなす事しばしばなり。西洋にても伊太利亜イタリヤの喜劇には幕明まくあきに作者の現れ出づるもの往々にしてこれありといふ。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
楼門の幕明まくあきには、とにかくこの座だけの大薩摩あり。
両座の「山門」評 (新字旧仮名) / 三木竹二(著)
拍子木ひょうしぎおと幕明まくあきうたとに伴ひて引幕ひきまくの波打ちつつあき行く瞬間の感覚、独吟の唄一トくさりきて役者の花道はなみちいづる時、あるひはおもむろに囃子はやし鳴物なりものに送られて動行うごきゆ廻舞台まわりぶたいを見送る時
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
時に歌舞伎座作者部屋には榎本氏を除きて四人の作者あり。竹柴七造竹柴清吉たけしばせいきち黙阿弥もくあみ翁の直弟子じきでしにて一は成田屋づき一は音羽屋付の狂言方きょうげんかたとておも団菊だんきく両優の狂言幕明まくあき幕切まくぎれを受持つなり。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)