差金さしがね)” の例文
之は多分其の書體が對等ではなかつたので、妹子は故意にそれを失つたか、或は太子の差金さしがねで失つたことにしたのであらうと想はれる。
聖徳太子 (旧字旧仮名) / 内藤湖南(著)
「こげなこた、みんな、玉井金五郎の奴の差金さしがねにちがわん。金五郎の方には、別に、挨拶をする。なんでも、ええ。明日、やるなら、やれ」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
先生を脅迫しているのも、こやつの差金さしがねに違いありません。私は何もかも知っているのです。こやつを生かして置いては……
空中墳墓 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「いえ、洲崎の金六親分さんは、若旦那を助けたかったら銭形の親分にお願いしてみろ。若旦那を縛ったのは銭形の親分の差金さしがねだから——っておっしゃるんです」
伯父は母の兄でした。ずつと昔父と伯父とが喧嘩したのです。父が財産の殆んど全部を父を破産させて了つた投機とうきにかけさせたのもあの伯父の差金さしがねだつたのです。
してみると、神尾が今日この席へ来ることも、神尾を誘惑に鐚をつかわしたことも、これらの連中の差金さしがねであるか、そうでなければ、いずれも同腹と見なければならぬ。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
花里が小主水の差金さしがねで身請をだくしますと直ぐ、伊之吉のもとへ品川から使い屋が飛んでまいった。
恭一や俊三は、お祖母さんの差金さしがねもあって、めったに彼のそばによりつかない。みんなが遠巻きにして彼を見まもっているといったふうである。彼は多少手持無沙汰でもあり、癪でもあった。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
好き嫌いを測るものは道徳的物差ものさしでない。しかるに好きなものは善い、きらいなものは悪いというように、愛憎あいぞうをもって曲直きょくちょくを決することは、ちょうど物の軽重を計るに差金さしがねを用うるがごとくである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
みんなその山の小父さんの差金さしがねであるということである。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「ふム……弦之丞の差金さしがねか」
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
昨日の喧嘩ね、七区の山笠やまが、おたくの山笠にぶっつけたこと、あれ、みんな、要之助さんの差金さしがねよ。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
大事小事こと/″\くその差金さしがねでやつてゐたので、番頭といつても、あまり身上に立ち入つたことは知らず、米の粉にまみれて、たゞもう他の奉公人達と一緒に働いてゐるといつた樣子でした。
大事小事ことごとくその差金さしがねでやっていたので、番頭といっても、あまり身上に立ち入ったことは知らず、米の粉にまみれて、ただもう他の奉公人たちと一緒に働いているといった様子でした。