差別けじめ)” の例文
もし、その差別けじめをクッキリとつけることが出来れば、もう木のこぶの貴方のところへは、私、二度とはまいりますまいが……
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
武士は武士、公卿は公卿、ちゃアんと差別けじめがあった筈だ。それをいちいち使い分けて原稿紙の上へ現わそうとするには、一年や二年の研究では出来ぬ。
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
人なる蝋に印をす諸〻の天の力は、善く己がわざを爲せども彼家かのや此家このや差別けじめを立てず 一二七—一二九
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
このやうな生れながらの差別けじめが、或る時には彼の胸に加へられる抑圧となり、或る時には鳩尾の辺りを撫でさする取澄した柔媚じゅうびひつらひとなつた。彼は次第にこの待遇に慣れて行つた。
垂水 (新字旧仮名) / 神西清(著)
琵琶のぬしは答えようはずもない、その音を聞けばわかるように身も魂も四絃しげんの中に打ちこんでいて、虚空のが彼か、彼が虚空の音か、その差別けじめをつけることは至難であるほどな存在であった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
国には盗人ぬすびと家に鼠と、人間ひとに憎まれいやしめらるる、鼠なれどもかくまでに、恩には感じ義にはいさめり。これを彼の猫の三年こうても、三日にして主を忘るてふ、烏円如きに比べては、雪と炭との差別けじめあり。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
濃淡の差別けじめを見せて周圍に流れ出した。
霧の旅 (旧字旧仮名) / 吉江喬松(著)
差別けじめは何のわざならむ
天地有情 (旧字旧仮名) / 土井晩翠(著)
その真贋が差別けじめつかず、総括的に一揆衆とあれば、恐ろしく思われてならないのであった。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
この内心の差別けじめが生れ出る根に横たはる秘密へと向けられた興味と渇望とは、彼の裡に次第に強くなりまさつた。李子夫人の方では決して、至にさうした蔑みを懐いてゐたわけではない。
垂水 (新字旧仮名) / 神西清(著)
「殺人剣、活人剣、剣に二種の差別けじめがある。このつるぎは、活人剣じゃ! すなわち一人の悪人を斬り蒼生そうせい百万を助くる剣じゃ! 神よイエスよ我が所行を慈悲の眼をもて見守らせ給え!」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)