居室きょしつ)” の例文
よりいっそう大きな打撃だげきをかれにあたえたのは、一通り案内を終わって、最後にかれの居室きょしつをのぞいたとき、それまでほとんど口をきかないでいた恭一が
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
平然として何の気にする処もなく、請負普請うけおいぶしんの醜劣俗悪な居室きょしつなかに住んでいる人があると慨嘆している。
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
愉快そうに一笑を放ってから、さてとばかり郎党のひとりひとりへ、迅速につ明快な指揮をさずけてから、自分はすぐ身をひるがえして、主人小寺政職まさもと居室きょしつへ駆けて行った。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、家宅捜索かたくそうさくをすると、時価じか概算がいさん億円おくえん相当そうとうする金塊きんかい白金はくきん、その地金ぢがね居室きょしつ床下ゆかしたから発見はっけんされたため、ついにつつみきれずして、刈谷音吉かりやおときち毒殺どくさつのてんまつを自供じきょうするにいたつた。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
私の居室きょしつには、かつて一枚の英傑の肖像画をも置いたことがないが、フランスの若い友人から送って来た、バッハの小さい肖像画だけは、長く私の書斎に飾って、け込むような親しさと
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
大臣の居室きょしつの隅から隅まで探したけれど、どうしても見つからないで弱っていると、素人探偵オーギュスト・ヂュパンは、警察の人々のやり方を批評して、大臣が詩人であることに気がつかぬから
外務大臣の死 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
そして読みおわると、それをかくしにつっこみ、腕組うでぐみをして、しばらくじっと考えこんでいたが、急に何か決心したらしく、大いそぎで自分の居室きょしつに帰って行った。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)