尾張国おわりのくに)” の例文
尾張国おわりのくにでは、犬山に一日、名古屋に四日いて、東海道を宮に出て、佐屋を経て伊勢国いせのくにに入り、桑名、四日市、津を廻り、松坂に三日いた。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ところが、同じ時に尾張国おわりのくに片輪の里に力強き女がいた。この女は、きわめて小柄こがらの女であった。大力の聞え高い元興寺の道場法師の孫に当っていた。
大力物語 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
尾張国おわりのくにの名古屋を中心とするのが愛知県であります。名古屋城は今も昔の姿を変えず、下にはほりを漂わせ、高い石垣の上にそびえ立つ様は壮大であります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
むかし、尾張国おわりのくに一人ひとりのお百姓ひゃくしょうがありました。あるあつなつの日にお百姓ひゃくしょうは田のみずまわっていますと、きゅうにそこらがくらくなって、くろくもが出てきました。
雷のさずけもの (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
向島むこうじま白鬚しらひげ神社の境内に毅堂の姓名を不朽ならしめんがため、その事蹟と家系とを記した石碑が今なお倒れずに立っている。鷲津氏の家は世々尾張国おわりのくに丹羽にわ郡丹羽村の郷士ごうしであった。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
寺本が先祖は尾張国おわりのくに寺本に住んでいた寺本太郎というものであった。太郎の子内膳正ないぜんのしょうは今川家に仕えた。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
大正十四年乙丑いっちゅうノ歳晩予たまたま有隣舎ゆうりんしゃその学徒』ト題シタル新刊ノ書ヲソノ著者ヨリ恵贈セラレタリ。著者ハ尾張国おわりのくに丹羽にわ郡丹陽村ノ人石黒万逸郎氏トナス。余イマダ石黒氏ト相識あいしラズ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)