将帥しょうすい)” の例文
全軍の信頼をつなぐに足る将帥しょうすいとしては、わずかに先年大宛だいえんを遠征して武名をげた弐師じし将軍李広利りこうりがあるにすぎない。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
と、いまや三軍の将帥しょうすいとしての決戦を期すと共に、自分一個と宿敵尊氏との、最後の対決も明日に迫ッたものと思い、退路の馬上、人知れずくちをかんだ。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
よし戦に勝っても、それが君主みずからの力でなくして将帥しょうすいの力であったような場合には、衆望がその将帥に帰して、終にはそれが君主の地位に上ることもありがちである。
その絵はどれもこれも、昔の勇士や、ギリシアの将帥しょうすいたちの全身像の銅版画ばかりであった。
「善いかな善いかな善い相好そうごうじゃ! 女ながらも将帥しょうすいうつわ、これなら秘法の解釈を、譲り渡しても心配はあるまい。娘よ、秘巻をひらくがよい!」りんとした声でこう云った。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
また故無きにあらず。兵馬の権、他人の手に落ち、金穀の利、一家の有たらずして、将帥しょうすい外におごり、奸邪かんじゃあいだに私すれば、一朝事有るに際しては、都城守るあたわず、宗廟そうびょうまつられざるに至るべし。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
これこそ天下の将帥しょうすいと言われる
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
盗賊でも将帥しょうすいたる者は一歩一歩兵法に等しい細心な思慮を費やして行かなければならない。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「こは、思いがけぬ御諚ごじょうにござりまする。人の沙汰やら存じませぬが、何で将帥しょうすいのよりごのみなどいたしましょう。すべては、御軍みいくさの下、この正成もみかどの一兵でしかございませぬ」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)