容斎ようさい)” の例文
小野さんはのぞき込んだ眼を急にらして、素知らぬ顔で、容斎ようさいじくを真正面に眺めていると、二人の影が敷居口にあらわれた。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
容斎ようさい嵩谷すうこく雪旦せったん文晁ぶんちょう国芳くによしあたりまでがくつわを並べているというわけだから、その間に挟まって、まさるとも劣るところなき名乗りを揚げようというのは骨だ
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
容斎ようさいの芳野、暁斎ぎょうさいからす、その外いろいろな絵を見せられた。それについて絵の論が始まった。
車上の春光 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
雪舟せっしゅうとか光琳こうりんとか文晁ぶんちょうとか容斎ようさいとかいう昔しの巨匠の作になずんだ眼で杓子定規に鑑賞するから、偶々たまたま芸術上のハイブリッドを発見しても容易に芸術的価値を与えようとしない。
女はまだなんにも言わぬ。とこけた容斎ようさいの、小松にまじ稚子髷ちごまげの、太刀持たちもちこそ、むかしから長閑のどかである。狩衣かりぎぬに、鹿毛かげなるこま主人あるじは、事なきにれし殿上人てんじょうびとの常か、動く景色けしきも見えぬ。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
(この画は先年淡島家の売立てに出たので今は誰の所有に帰しているか解らぬ。)椿年歿して後は高久隆古たかくりゅうこに就き、隆古が死んでからは専ら倭絵やまとえ粉本ふんぽんについて自得し、かたわ容斎ようさいおしえを受けた。