宮戸座みやとざ)” の例文
筋は無論、翁から割当てられたもので、自分たち二人はほとんどその口授のままを補綴ほていしたに過ぎなかった。劇場は後の宮戸座みやとざであった。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
まず須永の五六軒先には日本橋辺の金物屋かなものやの隠居のめかけがいる。その妾が宮戸座みやとざとかへ出る役者を情夫いろにしている。それを隠居が承知で黙っている。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あいつがまだ浅草田原町たわらまちの親の家にいた時分に、公園で見初みそめたんだそうだ。こう云うと、君は宮戸座みやとざ常盤座ときわざの馬の足だと思うだろう。ところがそうじゃない。
片恋 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
翌日あくるひ午後ひるすぎまたもや宮戸座みやとざ立見たちみ出掛でかけた。長吉ちやうきちは恋の二人が手を取つてなげく美しい舞台から、昨日きのふ始めて経験したふべからざる悲哀ひあいの美感にひたいと思つたのである。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
翌日あくるひ午後ひるすぎにまたもや宮戸座みやとざ立見たちみに出掛けた。長吉は恋の二人が手を取って嘆く美しい舞台から、昨日きのう始めて経験したいうべからざる悲哀の美感にいたいと思ったのである。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
宮戸座みやとざあたりに余命を保つ老優の技を見れば一挙一動よく糸に乗りをりて、決して観客を飽かしめざる事を経験し、余は旧劇なるものは時代と隔離し出来得るかぎり昔のままに演ずれば
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
平気な顔でちょうちゃんはあたいの旦那だんなだよと怒鳴どなった。去年初めて学校からの帰り道を待乳山で待ち合わそうと申出もうしだしたのもお糸であった。宮戸座みやとざ立見たちみへ行こうといったのもお糸が先であった。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
平気な顔でちやうちやんはあたいの旦那だんなだよと怒鳴どなつた。去年初めて学校からの帰り道を待乳山まつちやまで待ち合はさうと申出まをしだしたのもおいとであつた。宮戸座みやとざ立見たちみかうとつたのもおいとさきであつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
曲り角に出してある宮戸座みやとざ絵看板えかんばんを仰いだ。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
まがかどに出してある宮戸座みやとざ絵看板ゑかんばんあふいだ。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)