安価やす)” の例文
旧字:安價
一ポンド十七シリング六ペンスで一番安価やすいブリキのやつを買った。それも、はじめ二ポンドというのをしつこく値切って負けさせたのだ。
浴槽の花嫁 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
鶫うどん、鶫蕎麦そばと蕎麦屋までが貼紙びらを張る。ただし安価やすくない。何のわん、どのはちに使っても、おんあつもの、おん小蓋こぶたの見識で。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「何を言ってやがるんだよ。無代ただより安価やすいものあなかろうじゃないか。あたしゃア見るのもいやなんだから、さっさと持って行っておくれヨ」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
彼等の言ひ草に依ると、『あれほど味の佳い秋刀魚や鰯が、あり余るほどれて、安価やすいのが、そもそも怪しからん』
書狼書豚 (新字旧仮名) / 辰野隆(著)
安価やすい車があつたと見えて、今日はどゑろう早かつたな。またお前何やら、大まい五厘ほどの駄賃貰ろて、お糸さんの探偵いひ付けられて来たのやろ。
心の鬼 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
「何んだい、こりゃ! 笛じゃないか。それも安価やすく無い銀笛だぜ」
西班牙の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「なるほどこれはお安価やすくないぞ」と綿貫が床をって言った。
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
そこはよくしたもので、各寺々にはそれぞれ湯灌場買いという屑屋くずやと古道具屋を兼ねたような者が出入りをして、こういう払い物を安価やすく引き取る。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
折から来かかる一人の男、安価やす香水の香にぷむと。先払はせて、びらりと見へし薄羽織、格子戸明けて這入ると同時に、三味の音色はぱたりと止まりぬ。
誰が罪 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
と民弥は、西片町にしかたまちのその住居すまいで、安価やすかまど背負しょって立つ、所帯の相棒、すなわち梅次に仔細しさいを語る。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何しろ安価やすいんだからね。来てから俺の部屋を眺めまわして喫驚びっくりするだろうとは思っていたが、やっぱり喫驚しているね。一寸いい気味だな。貴様の部屋は今、掃除をさせている。
二人のセルヴィヤ人 (新字新仮名) / 辰野隆(著)
旦那マスター、ちょっと、手相を見さしてやって下さい。やすい。安価やすいよ——」
ヤトラカン・サミ博士の椅子 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
掏摸の野郎と顔をならべて、似而非えせ道学者の坂田なんぞを見返そうと云った江戸児えどッこのお嬢さんに、一式の恩返し、二ツあっても上げたい命を、一ツ棄てるのは安価やすいものよ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
千円は安価やすいものだね。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)