嫁女よめじょ)” の例文
嫁女よめじょ道中も三日がかりとして、飯田いいだ泊まりの日は伝馬町屋てんまちょうや。二日目には飯島いいじま扇屋おうぎや泊まり。三日目に南殿村着。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その向い側には嫁女よめじょの実父で、骨董品然とせこけた山羊鬚やぎひげ頓野とんの羊伯と、その後妻の肥った老人。
笑う唖女 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「サレバサ、全生院様モ止観院様モ何ト云ウ孝行ナ嫁女よめじょダロウト、草葉ノ蔭デオ前サンノコトヲオ喜ビニナッテルダロウヨ。ソコデソノ用意ニ取ッテ置イタ金ガ浮イタ訳サ」
瘋癲老人日記 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「そりばって、マンさんが嫁女よめじょになったら、はげしいメンピンになるとじゃろうもん……?」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
おばアさんの言うには、これは皆嫁女よめじょのなさしむるところだとうらんで死んだ。
白い光と上野の鐘 (新字新仮名) / 沼田一雅(著)
世間的に美妙が蟄伏ちっぷくしていた時には、心ならずも彼女たちもほこを伏せていた、おかあさんとおばあさんは、美妙の復活を見ると、あの輝かしかった天才息子を、大切な孫を、嫁女よめじょが奪ってしまって
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
嫁女よめじょ、十内はまだ帰りませぬか」
……とか、ええ嫁女よめじょを世話しようか、とか、いわれるもんじゃけ、そのたびに——いや、結構、わたしは女房貰うなら、谷口マンさんのような女が欲しい、と、いうたまでじゃ。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
若い嫁女よめじょのツヤ子を連れて、この町内の現在の家に引越して来た者であるが、夫婦仲は云うまでもなく、オシノ婆さんと嫁女のオツヤとの仲が、親身の間柄でも珍らしいくらい睦まじいので
空を飛ぶパラソル (新字新仮名) / 夢野久作(著)
彼女の嫁女よめじょがそばから吹出していった。
嫁女よめじょっ」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あだし男と戯れるところ……生んだばかりの私生児を圧殺するたまらなさ……嫁女よめじょ濡衣ぬれぎぬを着せて、首をくくらせる気持よさ……憎い継子ままこを井戸に突落す痛快さなぞ……そのほか大勢で生娘きむすめいじめる
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ウフフ、新学期で、上京したばっかりなのに、もう、嫁女よめじょの浮気の噂で、学校どころじゃないらしいわ。来年の卒業を待たんで、すぐ祝言したい。なんて、いうとるげな。面白うなって来たなあ。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)