妻室かない)” の例文
家へ帰ると、私は火鉢の傍で、一人で茶を入れて飲みながら、次のへやで小供を寝かしている妻室かないに、その話をして聞かせた。
妖影 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「好いよ、妻室かないや小供はここへ置いといて、この男と二人で男同志が寝るさ」クラネクはベルセネフに向って、「二人で一ぱいやりながら寝ようじゃないか」
警察署長 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
もう、三時でもあったろうか、夏生れた男の子が泣き立てているところへ、何人だれか女らしい客があって、妻室かないは泣き叫ぶその子を抱きながら取次していたが
妖影 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
源は両親もない妻室かないもない独身者の物足りなさと物悩ましさを、その少女に依って充たそうとしていた。
緑衣人伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
狸は山をおりて弘岡の下の村へ入り、其の庄屋の家の前へ往った。庄屋は此の狸奴、おれに化けておれの妻室かないをばかすと見える、と思っておると、狸は其の庄屋と同じ声で
怪談覚帳 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
はやく妻室かないをもらって身を固めるがいい、そうなれば怪しい者だって寄りつかない
雷峯塔物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
わしは三年前に妻室かないに死なれて、親類や知人しりびとから後妻を勧められたが、小供に可哀そうじゃからと、どれもこれもことわって今日まで来たが、お前がわしの家に手伝いに来てくれてから
放生津物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そのうちに私のような者でも妻室かないにしてくれる者があるなら、縁づきたいと思いまして、昨日江戸へ出て来ましたが、他に知人しりびともないので、困っておりますうちに、持病の眩暈めまいが起りまして
山姑の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
今に妻室かないと密会を続けておりましたが、それが、今晩、貴君あなたに見られて殺されることになり、私のうらみもむくいられましたが、私の両親はまだ何も知らずに、淫婦いんぷあざむかれておりますから
悪僧 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
貴方あなたにはまだお判りになりますまいが、私はこの三年ぜん妻室かないを迎えるとともに、例によって山寺へ往って、学問をしておった者ですが、時おり私の家へ使つかいにやっていた和尚が、妻室かないたぶらかし
悪僧 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
妻室かないがすこし怪しいから、急いで医師いしゃを呼んで来てくれないかね、ここを出て、右に五六軒往ったところに、赤い電燈のいた家がある、かかりつけの医師いしゃだから、僕の名を云えばすぐ来てくれる
水郷異聞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「お婆さん、私はまだ妻室かないがないから、媒人なこうどをたのみたいが」
断橋奇聞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
私も不思議でたまらないから、妻室かないに突かかるように云った。
妖影 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「これが私の妻室かないですよ」
虎媛 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)