失墜しっつい)” の例文
しかし、笠置、赤坂の失墜しっついがひびいて、熊野ノ別当以下三ざんの勢力も、宮方には冷たく、宮はやがて吉野から十津川とつがわの深くに一時身をかくした。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その彼の失墜しっついの瞬間こそ、私が彼の中に、彼流にいう私の「場所」を発見できる唯一の瞬間になるのだ。……
軍国歌謡集 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
隅田、高橋の両武将が、もろくも正成まさしげのために渡辺の橋で破られ、関東の武威ぶい失墜しっついするや
赤坂城の謀略 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そうして、いつの日にか二人がまたこの地で相まみえる時があるとすれば、その時こそ、大伴ノ御行は必ずや地下人じげびとかさもなければ、それ以下の庶民しもびとにまで失墜しっついするであろう。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
長州征伐は幕府創立そうりつ以来の大騒動だいそうどうにして、前後数年のひさしきにわたり目的もくてきを達するを得ず、徳川三百年の積威せきいはこれがために失墜しっついし、大名中にもこれより幕命ばくめいを聞かざるものあるに至りし始末しまつなれば
第一には、人をめいを誤ったことである。これは将として自己の全軍に絶大な信を失墜しっついする。かつても彼はずいぶん人を処断しょだんしているが、その人間を観過みあやまって断じたことはない。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
といっても、あのやかましい秀吉から、その捕縛ほばくをいいつけられている呂宋兵衛は、なんとしても、勝頼を秀吉の面前へ拉致らっちしていかなければ、たちまち、かれの信用が失墜しっついすることになる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)