太刀だち)” の例文
その四巻の古目録というのは、一名絵目録えもくろくともいって、上泉伊勢守が自筆で、新陰流のかく太刀だちを、絵と文章で書いたものであった。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このあいだに幾たびか、十太夫は「引き太刀だち」という秘手をこころみる。十太夫自身のあみだしたわざで、この手にかなう者はないと定評がある。
饒舌りすぎる (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
水のかれた川は、細いながらも、太刀だちのように、日を反射して、絶えてはつづく葉柳はやなぎと家々との間に、かすかなせせらぎの音を立てている。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
と私は矢継早やつぎばやに問うた。その熱心な口調にいくらか受け太刀だちの気味になった妻木君は苦笑しいしい云った。
あやかしの鼓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
本郷の道場へ太刀だちに頼まれていって、意外にも柳生の若様と斬り結んだり、それが後では、その源三郎といっしょになって不知火流の門弟を斬りまくったり……。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
けしきばみながらどやどやと木刀小太刀だちひっさげて駆け迫ってきた門人どもに莞爾かんじとしたみを送ると、叱咜しったしたその一喝いっかつのすばらしさ! すうと胸のすくくらいです。
龍頭りゆうづりたるつるぎ太刀だち
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
この黒を白といいくるめようとするようないい草が、磯五の口から出てくると不思議に道筋立って聞こえて、どうかすると、お高が受け太刀だちになるようなぐあいであった。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)