天丼てんどん)” の例文
看板には「御休息とお中食、天丼てんどん、トンカツ」などと書いてあったが、座敷へとおされてみて、こいつはいけない、と私は思った。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
控室へ帰ってみると、控室には一列に食卓が並べられていて、受験生たちはぼつぼつ食事をはじめていた。天丼てんどんである。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
夕食に楽屋一同へ天丼てんどんの使いものがあったが、須磨子の好きな物なのにほしくないからとて手をつけなかった。帰宅してからも食事をとらなかった。
松井須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「親子どんぶり、すし、天丼てんどん」と書いた同じような看板を、池に向けて出した店が、五軒かたまって並んでいた。
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
お前さんのは其処そこにお葉漬はづけかありますよ、これはわたしわたしのおあしで買つたのですと天丼てんどんかゝ候如そろごときはあへて社会下流かりうの事のみともかぎられぬ形勢けいせいそろ内職ないしよく人心じんしん
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
三十円五十円と金の出し入れをまかせられ、天丼てんどん鰻丼うなどんが来れば、お茶を入れるくらいで、じっとそばで見物しているのだったが、時には後口がかかって来たりした。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
天丼てんどんだカツライスだと、てんや物をどんどん取って、出前のあんちゃんに、ツケはあっちだ、下宿料につけとくんだから、おやじから取ってくれと言い渡した。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
みんなで天丼てんどんを食べたことがあったが、それは仏が生前に食べたいと言うので
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)