壮者わかもの)” の例文
吉村右京は血気盛んの壮者わかものであったから、素手すででこの曲者くせものに立ち向ったが、肝腎かんじんの主人の刀を持った金輪勇は、きもつぶしてやみくもに逃げてしまう。
此時又一人の壮者わかものが来て従学した。これは尾張国平洲ひらしま村の豪士細井甚十郎の次男甚三郎であつた。甚三郎はたま/\大湫と生年を同じうしてゐて、当時二十に近かつた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
左様そう斯ういたしておるうち、品川の噂がちら/\耳に這入り、玉和国楼の花里という花魁の評判が大層もないので、伊之吉も元より血気の壮者わかものでございまするし
そう言って、壮者わかもののように、眼をかがやかせる老先生を、これも、愛子いとしごを救いたい一念に、常の落着いた隠者の態度をとりみだしておられるのか——と羅門は気の毒そうに眺めて
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かたわらのベンチに腰懸こしかけたる、商人あきゅうど体の壮者わかものあり。
外科室 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
先づ、二人の壮者わかものが舞台に現はれた。兄弟である。
枕物狂 (新字旧仮名) / 川田順(著)
すこし骨細だが、実直そうないい壮者わかもの
顎十郎捕物帳:15 日高川 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
この子供のような年寄のような壮者わかもののような奇妙な男の名は米友というのでありました。そこへ駈け込んで来たのは、今なにもかも夢中で我が家を逃げ出して来たお玉であります。
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
壮者わかもののような迅い足で、彼はまもなく、白金台しろがねだいから目黒の行人坂ぎょうにんざかを歩いていた。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と云われた時は原父子おやこびっくりして、それでは先達せんだっての艶書を太左衞門がとうに焼捨てた事と心得ていたが、取ってあったか、あゝ困ったものだと思っていると、丹三郎は血気の壮者わかものですから心がはやって
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
接待は土地の壮者わかもの村娘そんじょうたちである。史進は、上座に三名をすえて
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
の者には親の敵だと、未だ年もかんで親の敵姉の敵を討とうと云う其の志ある壮者わかものを、怪我させまいと背打むねうちにする心得だったが、困った事を致したな、こりゃア不便ふびんな事を致した、手がはずんだから
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)