とりで)” の例文
旧字:
番頭小僧もろともにペコペコお低頭じぎをして、棚から盛んに反物たんものかつぎ出して切髪の女の前にとりでを築き立てると
この特権と信仰のとりでに対しては、どんな猛勇な兵も、そうやすやす、駈けあがって来ることはできまい——宝塔伽藍がらん蹂躪じゅうりんするまでのことはなし得まい——と、そう充分にたのんでいたふうもあった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひたひたと攀ぢてうばへるとりでにて何を叫びしつはもの彼ら
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
羽毛かざれる蒼白きとりでにそいて
で、畳もしっくりと敷きつめてあって、四隅には古箪笥や、長持や、葛籠つづらや、明荷あけにの類がとりでのように積まれてあるけれども、それとても室を狭くするというほどではありません。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
森と言へば叢立むらだつ霧のこちごちに気高けだかく厚くとりで立てたる
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
蒲団ふとんとりでの中で見つけなくてもいいあだし女を見つけてしまいました。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
とりでなすはじ木群こむらの深みどり我が水上みなかみはみ霧霽れつつ
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)